Barolo

かつて、W.Broadwayにあったリストランテ「Barolo」
今から23年前の1995年に初めてNYCを訪れた時、偶然立ち寄って目にしたあの光景は、今でも ‘THE NEW YORK’ なシーンとして私の脳裏に焼き付いている。

仄暗い店内の美しいテーブルセッティング越しに見えた広い中庭。そこから聞こえてくる談笑の声、グラスやカトラリーのぶつかる音、かすかに聞こえる水の音。ラフな服装でランチを楽しむ馴染み客たちとは裏腹に、白シャツにタイを結んだエレガントな出で立ちのスタッフ。
クリームイエローの壁に緑の葉を揺らす木々、その隙間からキラキラと降り注ぐ木漏れ陽。晩夏の午後に見たその光景に、NYCのことなど何も知らなかった当時の私は魅了された。この街で暮らす人々の、意外にも穏やかに過ごすあまりにも美しい午後の光景。

天井知らずのニューヨークの家賃高騰の最中、家主とのトラブルに転じた同店は、残念ながら2013年閉店してしまった。その後、別のロケーションで 「I Tre Merli」 として新たな店がオープンしたが、残念ながらかつての空気感はそこには無い。

人の記憶は曖昧で、さらに時間の経過と共に自身の都合のいいように塗り替えているのかもしれない。
継続するための変化を ‘進化’ と呼ぶ人もいるだろう。新しいものが注目されやすい現代において ‘変わらないもの’ は、残念ながらそれほど多くはない。 継続するための強い信念と客の信頼を維持し続けることは、並大抵なことではないはず。
新しいものを生み出すこと以上に、変わらず継続させることが目下の課題です。