Grill French

正しき日本の洋食。
12〜3年ほど前、クライアントの社長に招待された時の記憶を辿っての再来。

長いカウンターに美しく並んだテーブルセッティング、その向こうに見えるピカピカに磨かれたキッチンの前には、「THE COOK」の出で立ち仕事をこなす4人の料理人。気づくと、客の出入り毎に手を止めてはスッと背筋を伸ばし、「いらっしゃいませ」と「おおきに」を繰り返している。

前菜の野菜とサーモンのミルフィーユは、しっとりとしながらも噛む音が聞こえるシャキシャキのキャベツ、熱々で軽やかな小鯵のフライはサクサクでジューシー、しっかりとコシのある蛸は噛むほどに味が広がる。具材からして日本の洋食然のそれであるサラダは、凛々しいほど高く美しく盛り付けられ、清潔感に溢れている。
そして、思わずクスッと笑ってしまったロールパン。ひょっとしたら最後に食べたのはこの店だったのかもしれないなぁ、と、朧げな記憶を辿る。
賀茂茄子の挟み揚げは驚くほど軽やかで茄子は瑞々しく、甘めのトマトケチャップ(ソースではなくケチャップ!)が美味しい。照り焼きソースのステーキは、素晴らしい赤身肉の塊をシェフが目の前でカットした時には、その薄さに若干ガッカリしたが、食べてみるとその薄さが全く気にならないほど豊潤で丁度良いサイズだった。

あまり時間がないと伝えると「30分あれば十分」と笑顔で答えてくれたシェフ。結局、デザートを含め6品のコースにかかった時間は30分にも満たなかった。不思議だったのは、決して焦って食べたのでもなく、まるでゆったりと食事を楽しんだ30分間に思えたことだ。
他の客に対しても、全ての料理人は常に食事の進みを確認しながら、全くバタつくことなくしなやかに仕事をこなしていた。キッチンの隅から3人の仕事を見守る穏やかな表情のシェフの目には厳しさが光り、それがこの店全体の規律となっているように思えた。
“インスタ映え” 料理が横行する中、極見慣れた料理なだけに、実際に店に行かなければ分からない盛り付けや味の妙技、その店特有の空気感などの大切さに気づかされる。

今の場所に移ってから15年、店を始めてからはもうすぐ半世紀になりますかね、とシェフ。京都人の持つ品格なのか、彼の料理と向き合う姿勢なのか、自信に満ちていながらも謙虚さを備え持っているシェフはとても凛々しかった。
店を出ると、何だかとても清々しい気持ちだった。
ご馳走さまでした。また伺います。

 

グリル フレンチ
京都市中京区小川通御池上ル下古城町377
075-213-5350