Ichirin Hanare

まだ夕方の6時を回ったばかりなのに、鎌倉の奥座敷、かつて源氏の屋敷があった扇ガ谷(おおぎがやつ)の辺りはすっかり真夜中のようだ。
四川料理を主軸とした中華料理を小皿で食べられる店 「イチリン ハナレ」 は、そんな通りをひとしきり歩いた場所にある。 敷地160坪という贅沢なかつての屋敷の趣を残しながら、品良くモダンにリノベートされた空間は興味深くとても素敵だった。 とりわけ、玄関を入り廊下から中庭越しに臨む大きなカウンターを配したメインダイニングの画は、ドラマティックで強羅の旅館にでも来たようでちょっと嬉しくなった。

かつてNYに脇谷シェフのWAKIYAというモダンチャイニーズの店があった。 あれ以来 “モダン中華” への違和感が拭えず、実はちょっと眉唾だったのだけれど、この日、瀟洒に盛られた全8皿の料理を食べ終えた時は十二分に中華料理を堪能した満足感に驚かされた。 どの料理も 「四川料理、中華料理を食べたい」 という気持ちに応えてくれるもので、”モダン中華”なんて呼んではいけませんね。 特に四川料理の定番「よだれ鶏」は、そのタレが絶品で、その後の餃子のつけダレとしてキープする流れでしたが、その後も下げてもらうにはあまりにも惜しくテーブルに残してもらったほど。あのタレでヌードルが食べたかった!
洗練されたプレゼンテーションでありながら、奇を衒わずに王道の四川料理を、四川料理が食べたい舌の期待に応えてくれるコースにはシェフの自信がうかがえました。 パティシエは居ないとのことですが、カウンターで盛り付けされるデザートやミニャルディーズも美しくて美味しかった。

隙のない空間デザインや料理プレゼンテーションに反し、シェフやスタッフは肩の力が程よく抜けていて、心地良く食事を楽しむことができます。
1つだけ。差尺(テーブル天板と椅子座面との間の寸法)が適正で無く、食べる度の小さなストレスだけが残念だったなぁ。 コレ、かなり重要なポイント。

≫ イチリン ハナレ